御府内八十八ヶ所巡り 平成二十八年五月 二 

五月二日

前日から出るまでさんざん迷った挙句やっぱり歩いて行くことにした。朝に取り敢えず延命十句観音経を一遍だけ書いた。このいい加減さも前日に引き続き反省する結果となる。

始めたら最後までと思って歩き始めるも、保谷駅を渡ったあたりからいつもの様に疲れ始め、富士街道、新青梅、武蔵関駅、青梅街道を渡ったあたりで大をするために公園のトイレへ。辿り着くための真直ぐな路地は32年前早稲田予備校に通うためによく通った道で、ゴルフの打放し場はそのころからあったが、道を挟んだトイレのある公園はなかったような…。その公園もだいぶ経ってはいるがあの頃は雑木林だったような気がする。あれから三十数年も経ってしまったのかあ~と当時のことを思い出しながら東京女子大の裏を通ったところで善福寺公園の入口があったのでそこで休んだ。予備校時代何度か来た場所だが、あの頃の思いを変わらず残していた時分は夢は必ず実現できるものだと不安を感じながらも突き進むことが出来たが、今はそんな希望もなく如何に生を終わらすことばかり考えている。そんな思いを抱きながら西荻もいい家が立ち並んでいる(当時のフジテレビの会長など)なあ~と思いながら靴擦れの痛みと戦いながら井之頭通りに出た。前日のナビからここまで出ると目的地は近いのはわかっていたが足、脚のあちらこちらが痛い。しかし、ここまで来たら何とかと、そのまま西江福の駅の通りから斜め左に折れ、大宮八幡宮を見ながら南下して永福町の通りから路地に入って、少し行ったら目的地に着いた。

善福寺公園 1

善福寺公園 2

第八十八番所 文殊院

信教の自由

弘法大師と書かれた石柱から細い路地を真直ぐ進むと黒猫がいたので激写。文殊院と書かれた石柱の門の前で手を合わせ、中に入ると辺りは本当に静まりかえっていて静謐と言う言葉がぴったり合うようなたたずまいのお寺だ。古くもなく新しくもないが本当にこじんまりとしている。本堂の左が墓所となっていて、右側がご住職の自宅の様だ。とりあえず手を合わせ、写真を撮り、本当に疲れたので長椅子に腰掛けて寺の方が姿を見せるのを半時の間くらいは待っていようと思ったのだが早く帰宅したい気持ちがむくむく湧いてきて帰ろうと立ち上がった後、目に付いたこの寺の由来についての札を読んでいる内に自宅のインターホンを押す決心がついた。横に『御用の方はこのボタンを押してお待ちください』と書いてあったのを目にしていたのだが、疲れていると何事も面倒に感じて、引っ込み思案の虫が目を出す。押して、しばらくして返事がなければ帰ろうとしたが、すぐに女性の返事があり、玄関の錠が開けられ、女性が現れた。年齢的に三十代、若奥さんだろうか?御朱印を所望すると快く応じてくれた。やはり住職は不在で書いたものに彼女が日日を入れてくれるのだろう。(東京別院がそんなふうだったので予想通りだ)。彼女にその間、本堂にお参りした後墓所の中に五重塔があるのでそこでもお参りくださいと言われたので、ご本尊には既に手を合わせていたので、本堂の前で一度手を合わせて、墓所に向かうとすぐ目の前に石の五重塔があり、その下には東京別院と同じように八十八体の菩薩様がいらっしゃった。塔を取り囲むように四面に背中を向け鎮座している。とにかく合掌、撮影。それが終わって戻ると若奥さんが御朱印を帳面に戻すところだった。まだ廻り始めの様ですけど今年は逆に回る方が良いの知ってますかと尋ねられたので、知っていることと昨日と今日のことを話すとNHKの番組で近々その話を取り上げるんですと嬉しそうに話された。

静謐

本堂正面下のお砂踏み

五重塔を取り囲む八十八体の菩薩様達

アングル変えー洗濯物とヤクルトのお姉さん

思わず御朱印を頂けたのと女性の方と少しお喋りをしたので気分がよくなったのだろう。近くの公園で少し休んだ後そんなには遠くないので、三番所の多聞院に向かうことにした。当初計画にあった完全逆打ち(神奈川の仏乗院は別にして)は電車賃や実際に歩いてみての感想から既に無理だと判断していた。最後にお参りしたお寺まで電車で行くか、或いは全て実際に歩いて回る体力や日数(今年中に回るとして)などからも難しいと判断したのだ。

杉並から世田谷へ、永福に戻り高井戸を抜け神田川沿いを歩いたのだが、この辺りは新高級住宅街で、待機児童も多ければお金持ちの芸能人も多い場所だ。小ぢんまりとした綺麗な住宅が立ち並ぶ中恐ろしく静かな場所でもあった。自分には全く縁のない場所だ。その後中央高速に沿って歩く。高架下の薄暗いサッカー場があったりNHKの謎の運動場(おそらく国有地)があったり古い団地(おそらくURの持ち物だろう)があったりとそれまでとは違ってかなり庶民的な地域に入ると烏山寺町の中の一つの寺が目指す多聞院だった。道の表示板に騙され少し迷った挙句辿り着いたのだった。

第三番所 多門院

このお寺も戦争の後に移転した寺で文殊院よりは広いがひっそりとして綺麗なお寺だった。幸いにも中に人影があったのだがどうやらお墓参りの方の様だ。入って右側に変わったレリーフ(涅槃図)があったので写真を撮ってみる。本堂に歩いて行くと賽銭箱がない。とりあえず手を合わせ、入って左側にある像の写真を撮ったが、それ以上は目に着くものがなかったので、とりあえずインターホンのボタンを押して見たら、中から男性が出て来たので御朱印をお願いすると引き受けてくれたので頼んだ。雰囲気から寺務の人かなあと思ったがそれは間違いだった。戻ってくると色々語り始めた。ネットで語られているように御朱印を貰うには帳面を直接渡すのではなく一枚一枚で戴いたほうが良い(過去の御朱印の帳面からの脱落防止など)とか本当は納経をした後に御朱印を戴くのが筋だとか時にはあまり態度が良くないお寺もあるかもしれないが、理由は色々あって、今は檀家のための小さなお寺が多いので仕方がないとか…。そのような場合は御本尊と心を通じるためにやってきたのだと思いなさいとご教授されたのだった。この方、話を聞いているうちに気付いたのだが、この寺の御住職だったのだ。服装が平服だったので勘違いしてしまったのだ。それにしてもこの方、雰囲気からお坊さんとは思われない方で、本当はいい方なのだが、一言言わなければ気が済まない性質なのだろうと私は感じた。私とよく似ているところがある。とにかく神奈川を別にして八十八か所の中では割合郊外にあるお寺で運が良いのかわからないが御朱印をうまく戴けたのであるから幸先の良いスタートなのかもしれない。

※疲れていたためか本堂の上に飾られているお寺の名前の入った額の写真を撮るのを忘れてしまった。ショック

涅槃図ーちょっと怖い

上司の年賀状に『短気は損気』と書かれていたことがある。自分は短気ではないが、物事がなかなか変わらないのが嫌なだけなのだが…

帰りはこのまま根性を見せ吉祥寺駅までは歩こうと歩を進める。安倍政権になって河川の無駄な治水工事が再開されたがこの辺りの玉川上水は手付かずにされている。おそらく保存のためにそうしているのだろうが、一時間前に世田谷の神田川沿いを歩いた身にとっては不思議な気分だった。ただ綺麗にするだけではなくこういうやり方があるのだと感心させられた。その後、地鶏の農場の隣のサッカー教室のグランド(鳥インフルエンザなどを気にしないママ―そりゃあ将来スター選手になってくれた方が良いもんなあ~)興味深い地域を抜け、一番よかったのは三鷹台の駅前の神田川の上に天日干しの様に吊るされた小さな鯉のぼり達だった。50センチほどの布に地元の小学生が思い思いのデザインで描いたもので道中の最後にほっこりさせられた。

吉祥寺の駅前で栄行きのバスに乗る前に少し商店街を歩いたのだが、小笹と肉の佐藤は相変わらずの混みようで、吉祥寺自体三十年前とそんなに変わっていない印象を受ける土地柄なのだが人の多さは自分が住んでいた頃の倍以上になっているような気がした。ちなみに前々から気になっている漬物屋の前を通ったが、一株500円だったので購入することはなかった。ネット情報ではもっと安かったはずだが?(セレブ値段?)

バスに乗ると私が座った横の通路に可愛げな女子高生が乗り込んできた。バリーさんの小さな縫いぐるみをナップサックに吊り下げている。大泉学園の駅で私の隣に座ったのだがとうとう顔を見ることは出来なかった。良いおっさんがジロジロ窺っていたらやばいもんね。ただ、乗り込んだ若い男の子たちが彼女の顔をチラチラ見ていたのだから案外かわいい顔立ちだったのかもしれない。その中の一人の男の子は浪人生のような感じだったが、彼女と同じ停留所で降りたので顔見知りなのかもしれないが、見事に無視されていた。青春だね。

終点の新座栄で降りて私のジョギングコースの黒目川沿いを懸命に一時間かけてやっとのことで自宅に辿り着いた。途中川の中に入った外国人が鯉を掴んで写メを撮っていたが注意する気も起らないほど疲れ果てていた。私が子供の頃はこういうことをする餓鬼ども(私も含めて)たくさんいたもんだが、日本の子供はそんなことはしなくなってしまった。外国人のいい大人がやっているのだから時代は変わったと言うより私が歳を取り過ぎたのかっ~。

※二日たったこれを書いている今現在も疲労が抜けない。

第八十八番所 文殊院

第三番所 多聞院


歩行距離
16km 自宅→文殊院(方南町)
10km 文殊院→多聞院(高井戸、烏山寺町)→吉祥寺駅
3km 栄町停留所→自宅

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